院長ブログ

アキレス腱が痛い!という人に起こっている炎症の場所とその治療法について

2020年2月15日更新


いろは接骨院の服部です。
柔道整復師(接骨医)の免許を取って12年目になります。
 
スポーツや日常生活をしていてアキレス腱が痛いという患者さんが来られます。
痛い場所が
 
①アキレス腱がカカトの骨につく場所の痛み
②アキレス腱実質の場所の痛み
 
の二つに大別されます。
 
患者さんの表現としては ①の場合は「カカトが痛い」という表現が多いです。
今回は②のアキレス腱実質を痛みの場所と訴えられる患者さんのケースについてお話します。
そのときに実際にアキレス腱に炎症がある場合(アキレス腱炎)と、そうじゃない場合(アキレス腱周囲炎)があります。
 
今回はそんなお話です。

どんな訴えが多いか

アキレス腱炎もアキレス腱周囲炎も共通して三つの主徴があります。
アキレス腱の痛み
腫脹(はれている)
運動障害
 
とくに動かしたときに痛くて仕事やスポーツに支障をきたすときもあります。
さらに特徴的なのは朝起床時の一歩目が痛いけど、数分後には痛みが軽減しているケースが多いです。
 

アキレス腱とその奥の脂肪体の話

アキレス腱はみなさんご存じのことでしょう。
ふくらはぎの筋肉がカカトに付く部分の腱になります。

ジツはこのアキレス腱の深層(骨に近いところ)に脂肪体があります。
骨の近くには筋肉(長拇趾屈筋腱)が走っておりその間になります。

 
この黄色い部分の名前をKager’s Fat Pat(ケーガーズファットパット:ケーガー脂肪体)といいます。

アキレス腱部を痛がっている場合、アキレス腱の本体で炎症が起こっているケースとこのケーガー脂肪体に炎症が起こっているケースがあります。
 
この二つを鑑別(どちらか見極め)する際に有効なのがエコー観察なのですが、患者さん自身の感覚でわかる場合があります。
それがつま先を上げ下げした際に、患部に軋轢音(キシキシという感覚)があるかということです。
KFPの炎症の場合、脂肪体の滑走性(すべり)が悪くなっていることがあるのでこのキシキシ感があるそうです。
もちろん必ずではないですが、一つの目安にするといいと思います。
 
ここで実際のエコー観察の様子をごらんください

アキレス腱の炎症と脂肪体の炎症

アキレス腱のエコー画像

アキレス腱に緑色をつけます
アキレス腱の炎症

KFP部分の炎症

この画像の緑の矢印の部分がアキレス腱部になります。

治療法について

※この治療法の記事は接骨院ではできない治療もありますので、ある論文から引用をさせていただいております(引用論文の紹介は記事の最後に)

まず保存療法が行われ、治りが悪い場合(4~6か月たっても治らない)、手術療法を検討することが多いです。
もちろん接骨院では手術はできません。
そして保存療法にもさまざまな保存療法があります。
設備やその他の条件で当院でできること、できないこともありますが、どのような保存療法があるかをご紹介します。

安静とスポーツ活動休止

通常、本症の患者に対して2~6週間の安静とスポーツ活動の休止を支持し、非ステロイド性抗炎症薬や湿布の処方、局所のアイシングなどを行わせるが、本症に対する安静の有効性についてエビデンスはないとされている。

わかりやすい言葉で解説します。
アキレス腱に炎症が起こっている場合、スポーツ活動を休止して様子を見ます。その間、炎症止めの薬やシップなどで炎症を収めようとしますが、この症例に関して有効であるという根拠(エビデンス)がまだ乏しいということです。

運動療法

この症例の患者さんに対して、当院での実施率が今いちばん多いものです。
接骨院でできる施術は限られていますが、この方法が一番有効であるとされています。

エキセントリックエクササイズのプロトコル
①壁に触れるなどしてバランスを取りながら、健側下肢で両踵を最大限持ち上げる。
②カカトはそのままの位置で患側のみで立つ。
③膝関節伸展位を保ちながら踵を最大限降下させる。
④膝関節軽度屈曲位を保ちながら踵を最大限降下させる。
これを15回3セット、1日2回を毎日実施し3か月間継続することが推奨されている

とありますが、専門用語が多いため、当院患者の写真と解説をしたいと思います。
靴下を脱いでいる方が患側(痛いほう)です。

  1. 痛くない方を中心につま先立ちする
  2. 痛いほうの膝を伸ばしたまま痛くないほうの足を上げる
  3. 膝を伸ばしたまま痛いほうのカカトを降ろしていく
  4. カカトを降ろした状態で膝を曲げ、さらにカカトを降ろす

当院ではベッドの端っこを利用して行ってもらい、自宅でする場合、階段と手すりを使ってやってもらうことにしています。

  
この次からは病院で行う保存療法ですので接骨院では実施されないと考えてください。

注射療法

ステロイド注射療法は短期的な除痛効果を得るために使われることがいまだ多いが、腱内投与に関しては腱の脆弱化による医原性断裂のリスクが高く原則禁忌と考える。

とあります。いわゆるステロイドを注射するとそのときは痛みが取れるかもしれませんが、腱が弱くなって腱断裂のリスクがあるのでやっちゃダメということです。

体外衝撃波療法(ESWT)

この療法は

難治性腱症に対して、神経終末の破壊による除痛作用と細胞レベルへの機械的刺激による組織修復促進作用があると考えられている。アキレス腱鞘に対する有効性はRompeらによるとESWT群(52%)とEccEx群(60%)では安静群(24%)と比べて有意に成功率が高くまたEccEx群とEWST群の組み合わせでは有意に成功率が高かったと述べている(82%)

 
とされています。わかりやすい言葉で解説します。
「神経終末という痛みを感じる組織があり、それを体外衝撃で壊すことによって痛みを抑えることができるだけでなく、その衝撃が加わることによって腱症が起こっている組織の修復も早くなると考えられている」
ということです。
統計を取った場合、安静にしているだけの24%に比べて52%の効果があったとみなされ、先にでた運動療法と組み合わせるとなお効果的であったということが言われています。
ちなみに日本では保険適用外とされています。

自己多血小板血漿注入療法

この療法は

自己の血液より分離した血小板を多く含む血漿を腱症病変に経皮的に注入し、治癒過程を促進させる治療である。

とされています。自分の血液の中にある血小板を病変部に注入するということです。
血小板は成長因子や修復のために必要な物質がたくさん含まれているのでそれらをもって治癒を促進しようとする治療法といえます。
ただ、

しかし、これまでの臨床研究では本症に対する有効性は認められておらずわが国での保険適用も認められていない

とも記載されています。

硬化療法

この療法は

異常に入り込んだ新生血管を閉塞、硬化させ、さらに増生した神経終末を破壊することで腱修過程を再開させ腱の再生を促す。しかし、その有効性のエビデンスはまだ不十分であり、わが国での保険適用も認められていない

とされています。
新生血管とは炎症部分に見られる新しい血管で、エコー画像でも確認されるものです。
その血管をつぶしてしまうことで炎症をなくしてしまうということです。
まだ新しい治療法で、有効性を証明されるところまで進んでおらず保険も使えないものとなっています。

まとめ

いろは接骨院
さまざまな保存療法がありますが、エビデンス(根拠)の少ないものや、お金のたくさんかかるものが多いです。
有効性を考えても自宅でもできる運動療法やインソール作成を当院では勧めさせていただいております。
当院ではアキレス腱の痛みにも有効な「回内足を矯正するインソール」の制作も行っています
059-333-4155
詳しくはこちら
https://168168168.jp/iroha-do/foot-care-and-insole/

この記事における引用部分はすべて下記の通りです。
引用:高橋謙二「アキレス腱症・アキレス腱周囲炎の診断と治療」『関節外科』メジカルビュー社,2017,p36-43